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日本版SOX法の知識

米国におけるSOX法の誕生

米国における世界最大級の粉飾決算事件

2006年6月に制定された「金融商品取引法」には「日本版SOX法」と呼ばれる、アメリカで制定されたSOX法を手本とした条項が盛り込まれています。

そのアメリカでSOX法が誕生したきっかけは、2000年代に入ってから続発した巨額の粉飾決算事件にあります。

2001年12月 エンロン事件

総合エネルギー取引とITビジネスを事業内容としていた企業エンロンは、1985年の誕生から2000年度には全米売り上げ第7位まで急成長し、 株式市場の評価も高かったのですが、2001年10月ウオールストリートジャーナルによって、不正会計疑惑が報じられました。

これををきっかけに、次々と不正会計・不正取引が発覚し、株価が急落、そのまま経営も破綻しました。そして同年12月には破産法の適用を申請しました。

このエンロン事件では、会計監査を担当していた公認会計士が監査の証拠隠滅を図るなど、粉飾決算に加担していたことが発覚し、会計士と企業の癒着も問題視されました。

2002年7月 ワールドコム事件

M&Aを繰り返して急成長した通信大手企業ワールドコムが、監査員の告発によって、粉飾決算が発覚し、それが原因で破綻、2002年7月に破産法の適用を申請しました。

同社の負債総額は400億ドル(4兆円以上)を超え、エンロンの記録を更新し「アメリカ史上最悪の破綻」となりました。

これらの事件に見られる粉飾決算の原因は、株価が上がるほどに経営者への報酬が上がるため、粉飾決算をしてまでも株価を吊り上げようとする経営者のモラル低下、 会計監査とは別に多額のコンサルティング報酬を得て、不正会計に加担する監査法人のプロ意識の欠如にあると言われています。

このような不正行為は、発覚と同時に株式を購入する投資家への信頼を大きく崩してしまいます。そして、投資家の不信感は株式市場全体に対する不信へと変貌してしまいます。

そのため、エンロン事件の発生は、投資家の信頼を失うだけでなく、アメリカ経済の基盤に対する信頼が大きく崩れることを意味していました。

危機感を覚えたアメリカ政府は、このような粉飾事件の再発防止と、株式市場の信頼回復を図ることを目的に法制化を急ぎ、エンロンの破綻からわずか8ヶ月後の2002年7月、SOX法が成立しました。

しかし、ブッシュ大統領が、SOX法に署名する直前に、ワールドコム事件が発生するという皮肉な結果も招いてしまいます。

米国SOX法の概要

SOX法は、法案を提出したポール・サーベンス(paul Sarbanes)上院議員、マイケル・G・オクスリー(Michael.G.oxley)下院議員の名前から、 サーベンスオクスリー法(略してSOX法)と呼ばれ、日本では企業改革法と訳されていますが、正確には下記法案となります。

「上場企業会計改革および投資家保護法]
(public Company Accounting Reform and investor protection Act of 2002)

名称からも分かるように、投資家保護を最大の目的として、企業会計の不正に対処するため、上場企業の財務報告と、そのプロセスに関して厳格に規制した法律です。

監査人の独立性(201~209条)、財務ディスクロージャーの強化(401~409条)、証券アナリストの独立性と行動規範(501条)、 ホワイトカラー犯罪に対する規制強化(901~906条)などさまざまな規定がありますが、中でも以下の3点が、重要なポイントとなっています。

コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化

コーポレート・ガバナンス(企業統治)は、企業の内部牽制を行う仕組みや不正行為を防止する機能のことを指します。

アメリカの会社では、社外取締役が、経営者たちの経営内容を監視したり、監督する役目を持っています。しかし、経営者達と親しい間柄だったり、経営知識に乏しいようでは社外取締役を務めることはできません。

SOX法では社外取締役として、会社と利害関係が無い人が選任されること、財務、会計の専門知識を有する人が選任されることを要求しています。

これによって、経営者の監視、監督機能を高めようとしているのです。

正確な財務情報の提供

最高経営責任者であるCEOと最高財務担当責任者であるCFOは、自社の財務情報に関する開示が適正であることを宣誓することとなっています。(302条)

しかし、経営者が全ての会計情報をチェックして、財務情報に関する開示が適正であることを証明することは、とても困難な作業となります。

そこで、経営者が、財務処理に関わる仕組みやプロセスが、有効に機能していることを検証すれば、その仕組みやプロセスによって、処理された財務情報も正しいという間接的に証明する方法を、義務化したのです。(404条)

この仕組みやプロセスが、「内部統制(Internal Control」と呼ばれるものです。

SOX法では、経営者自らが、財務諸表に係る内部統制の構築と運用を行い、その有効性を検証しなければならないと要求しています。

会計監査制度の改革

独立した外部の公認会計士や監査法人は、財務情報の監査だけでなく、内部統制に関する監査も要求しています。(404条)

しかし、監査を行う公認会計士と企業が癒着している場合、監査としての機能が働かなくってしまいます。そこで、会計監査を行う監査法人は、 監査業務以外のコンサルティング業務の提供を禁止、監査の質をチェックする公的機関(pCAOb)を設置するなど、対応策がとられています。 そのほか、財務会計に関する犯罪に対する罰則の強化や、内部告発者を保護するなど、不正に対する厳格な対策が盛り込まれています。

これらの対策によって、徹底した監査人の独立性強化を図り、監査が本来の機能を取り戻せるようにしてあります。